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地球を救うDVD映画「張り込み」 [サスペンス]

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 張り込み
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松本清張の小説が松竹で映画化された。
事件は1958年だから今から56年前の話だ。

題名の通り刑事が事件を解決するために容疑者の「張り込み」をするわけだが、昭和32年の日本の風景がリアルに表現されている。


現在、舗装されてない道路を見るのはまれだが当時はでこぼこの道が普通だった。庶民の足は電車かバスであり、バスには女性の車掌、いわゆるバスガールがいてテキパキと仕事をするさまは見とれるほどだ。そして喫煙者は幅を利かせ、どこでもたばこは吸えるし、どこでも吸い殻はは捨てられた。また、父親が外で働いて家に帰ってくると、父親は尊敬される時代でもあった。戦争で負けてもまだ男は強かった時代があった。


警視庁捜査一課に勤務する巡査部長の下岡雄次と巡査の柚木隆雄(ゆきたかお)の二人が張り込みをする。江東区深川の三川屋質店に強盗が入り主人を拳銃で殺害した。犯人は2人組で主犯はすぐに捕まったが、もう一人は逃走した。犯人の石川久一(田村高広)は持病を持っていて、3年前の恋人、横川さだ子(高峰秀子)に接触するする可能性があるとして、2人の刑事は東京から九州の佐賀へとんだ。


今は飛行機で2時間足らずだが、当時は汽車で20時間以上かかったようだ。汽車がまたすばらしい。汽車ほど人間に勇気を与える機械はほかにあるだろうか。力ずよく走るさま、汽笛の体中をしびれさせるような音、人間の作った傑作だ。映画の中ではC57とあった。話がそれてしまった。


一日かけて目的地の横川さだ子の家のすぐ前に宿をとった。ここで一週間の予定で張り込みを行う。

「さあ、張り込みだ!」と柚木(ゆき)刑事は気合を入れる。二階の障子から24時間交代でずっと見張るのである。恋人の横川さだ子は、20歳も年上の後妻に入ったが、子供3人、夫から一日100円しかもらえない仕切られた主婦。夫は銀行員。

柚木刑事は、さだ子のあまりに生気のない、全く生き生きしたところがない女、毎日掃除、洗濯、ミシン、買い物と十年一日のように暮らしているさだ子に疑問を持った。何かある。

その何かは6日目に起こった。さだ子が家を出て昔の恋人の犯人、石井久一に会いに行ったのである。柚木刑事は見逃さなかった。どこまでもどこまでも追っていった。いつしか柚木はさだ子に同情するようになっていった。毎日見ていると情が移るのだろう。

二人は佐賀の温泉旅館で会った。さだ子は過去を清算して今度こそ石井と一緒に生きようと決心していた。石井の方は持病のためかそれほど積極的でなかった。


柚木刑事は追いつめた。仲間の応援をたのんで慎重に動いた。そして二人をあっけなく確保した。


さだ子の落胆は相当のものだった。結局さだ子は2時間の間、命を燃やして真剣になっただけだった。また、明日からケチな夫と子供たちの生活に戻っていく。明日からはあんな情熱が潜んでいようとは思われない平凡な姿でミシンを踏んでいくのだろう。


石井の方も犯人の手伝いをしただけで刑も軽い。
柚木刑事は石井にさとす。
「済んだことはしようがない、今日からやり直すのだ、やり直そうと思った時、新しい人生が始まる、きっと新しい人生が開けるよ、君も若いんだから」


黒塗りの汽車がホームに入ってきた。3人乗り込む。汽車は東京を目指して力ずよく発車していった。


この作品は、野村芳太郎監督のもとに制作された松竹映画で、昭和32年のリアルな、生きた人間の風景と、柚木刑事の「張り込み」という汽車のような刑事魂が見どころだろう。映画が終わった後、タイムスリップしたように感じた。

監督:野村芳太郎
脚本:橋本忍
製作:小倉武志(企画)
出演者:大木実
     宮口精二
音楽:黛敏郎
撮影:井上晴二
編集:浜村義康
公開:1958年

キャスト
大木実(柚木刑事)
宮口精二(下岡刑事)
高峰秀子(横川さだ子)
田村高広(石井キュウイチ)






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