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餌食(えじき) [私小説]

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【序章】
私が情報商材販売の餌食になったのは、
私の心の中にあったスキマに悪魔が入り込んだからだった。

一時は闇の仕事人を、自らの手で実行しようかと思った。
もし私が係累のない気楽な立場だったら、本当に実行計画を立てただろう。

5人はいるぞ! いまいましい。
商材の紹介をするお助けの宣伝役が必ずいて、その宣伝役にはなおさらイマイマシサが増幅する。
有り体に言えば、獲物が引っかかるトラップ作りのお手伝い役だ。
こちらが、クレジットカードで24回払いの約束で商材を申し込めば、銀行が代金全額を即支払い、
後は銀行が金利18%をプラス徴収しながら、確実に集金するという方法だ。銀行の徴収手数料が18%取れるということだ。
これが申し込みの1クリックでそこまで行ってしまうのだ。
敵はその1クリックをさせるために、いかなる方法も考案し実行する。いかにお客が勘違いをしてクリックさせるかが勝負なのだ。
悪行でも、悪行だと指摘して証明されなければ善行であるのだから。その指摘するにも時間がかかり、しかも巧みな手立てを法律を使って考案しているのでちょっとやそっとでは崩れない。こちらがメンドウダとあきらめるまで攻撃はやめない。

「嘘は泥棒の始まり、嘘を言ってはならない、誤解を招くような言葉を言ってはいけない。」これらは昔、親から教えられた処世術だった。
この日本的な道徳心、処世術的防護壁は彼らの前にあっという間に破られてしまった。
敵は狩猟民族を祖先に持つ欧米の猛者だった、或いはそれを信奉するコピー人間。
狩猟民族は「欲しいものは奪い取る」、この一言に尽きる。

この思想は世界を簡単に変える方法だった。
日本が江戸時代末期に黒船に襲われたのもこの科学技術を携えたこの思想だ。
そこから、日本人は幕末の志士から始まって、日本を西欧の餌食にならないように真剣に考えた。欧米列強の国々に食い物にされないようにと。

その結果日本は世界史上まれに見る発展を遂げた。途中、第二次世界大戦によって、奢れる小民族に成り下がってしまったが。
正に、奢れる者は久しからずの例えを実践してしまった。それでも、勤勉な日本人は不死鳥のように蘇り高度成長期を迎えた。が、日本の技術を盗みながら台頭してくる後発の国々には勝てない。
日本もかつてそのように発展してきたのかも知れない。

話があらぬ方向に行ってしまった。軌道修正、軌道修正。
群雄割拠の時代にも策士は多くいた。
しかし策士たちには民を救うことが根本にあった。
ところがどうだろう。
今の欧米仕込みの詐欺師達は、相手の隙を見つけて血を吸う吸血鬼に変わらない。
彼らはヤブ蚊、ヒル、がん細胞の類いだ。
生きとして生けるヤブ蚊も動物の血を吸うことに命がけなのだろう。

初めは多くの不幸な人を救いたいという希有な尊い思いも、いつの間にかいっぱしの詐欺師に成り代わってしまった。
彼らは引け際が大切だと思っているだろう。
儲けた後は一刻も早く退くのが肝要だ。そしてもっとましな、
まっとうな方法がないかと思いを馳せるだろう。
「人間の美しい心が生きる、多くの人を幸せにする企業」を作ろうと。

私は最近ある企業家、岡田徹という人の詩を読んだ。ビジネスの世界にも詩人がいるとは驚きだ。
一言で言えば「人の心の美しさを企業の中に満たそう」という。続けて岡田氏は言う、「商人は誠実で正直で暖かな人の心を持っている必要があり、また人々もそれを求めている」
皆さん、ネットの世界の悪徳商人とは、月とすっぽんほどの差があります。

話は戻って、
ネット起業家のマニュアルに、「時として悪事を働くことも大事の前の小事として必要」と一行記述されているのかも知れない。
しかし、そんなことでこの私の恨みは消えるだろうか。
本物であるかどうかの確認はできただろうか?
情報商材の検証ができない仕組み作り、タイムリミットを目前にした時間設定、こぼれるばかりのおいしい言葉、私の心は、知らず知らずそれに麻痺させられてしまった。
信じれば救われる?と考えたとき 悪魔はその時ほくそ笑んだ。
<つづく>





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