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郵便配達人の出てこない「郵便配達は二度ベルを鳴らす」とは? [サスペンス]

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郵便配達は二度ベルを鳴らす Ossessione (妄執)

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
イタリア語: Ossessione, 「妄執」は、1942年(昭和17年)製作のイタリ
ア映画、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品である。


現在テレビなどで放映されているサスペンスドラマのお手本のような作品であ
る。それが1942年イタリアで発表されている。もう、72年も昔の話だ。

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トラックのフロントガラス越しに走っている道が見え、緩やかなカーブにさし
かかった。
左にドライブインらしき建物が見える。
運転手は近づいて車を止め、ドア越しに店主らしき男に声をかける。
「ガソリンを頼む! ブラガーナ! ブラガーナ!」
なじみ客らしい。
そこの店は食堂も酒場も兼ねていた。運転手とその助手は車を降りると、朝食をとろ
うと店に向かった、そしてふと荷台を見た。
「なんだこいつ?」
荷台に足を折り曲げて男が眠っていた。昨夜荷を積み込んでから夕飯を食いに
行ったからその間にもぐり込んだんだろう。浮浪者か?
この浮浪者らしき者がこの映画の主役である。


浮浪者は引きずり下ろされた、特にいさかいはなかった。そんな時代なのだ。
浮浪者はまだ目が良く覚めていなかったが、とぼとぼと店の中に入った。店の
テーブルをすり抜けてそのまま厨房に入っていった。そこには女がいて何やら
料理を作っていた。


二人は初対面にもかかわらず、会話を交わした。
飯はあるか?
  はあ?
食いもんだよ。
  今作っているから、テーブルで待っててよ。

そこへ店主が入ってくる。
男は車の整備工だという、店主はちょうど車が壊れているから直してくれない
かと依頼する、そして水道のポンプも直して欲しいと頼んで、その時来店した
神父と一緒に魚釣りに出かけてしまう。ずいぶんのんきな店主だ。

女は女房とはいっても店主とは20も年が離れていた、女は安らぎが欲しかっ
たのだ。家があって私を大事にしてくれる男。
ここの店主と結ばれたが、店主は女を家政婦がわりに扱った。
女は毎日がうんざりしていた。
年取った店主に体を触られるとぞっとした。しかし出て行くところはなかった、

しかし今日ここにたくましい体をした若い男が来た。
彼は私を理解してくれて、優しい。
彼女は彼に望みを託した。

このような事情の流れは普通に違和感もなく進んでいった。
止める杭はない。
男の名前はジーノ、女の名前はジョヴァンナ。
しばらく3人で店を切り盛りした。

店主は2人に嫌われていた、自分勝手で人の気持ちを考えない。
人を思うままにこき使う。こんな店主にうんざりしていた。
そして若い二人は手を取り合って家を出た。

ジョヴァンナは先が見えない生活をするわけに行かないと途中で
立ち止まり、考え込んでしまう。
二人は離ればなれになってしまった。

彼女は貧しさが怖かった。そのため夫も家も捨てられなかった。

ジーノは一人出歩いていく。
しかしジョヴァンナを忘れられなかった。
海に出れば潮風に吹かれてしがらみも忘れられる。
船に乗って海に出ろと人に言われる。
ジョヴァンナの思い断ちがたく、ジーノは遠くには行けない。かといって戻る
わけにも行かない。彼は知り合いの手伝いをしながら日を過ごす。

偶然にも、ジーノはジョヴァンナ、店主と再会した。とある町の祭りに出会っ
たのだ。ジーノとジョヴァンナはすぐに別れていた間のむなしさを暖め合っ
た。が、将来の見えないジーノにはついて行こうとしない。しかしジーノとは
別れたくなかった。

結局三人は連れ添って帰途についた。
店主曰く、金の稼ぎ方を教えてやる、そして金のため方も、
そうやって気楽に生きていけばいいのだと、ジーノをさとす。

店主は帰りの途中、近道だと言って山道に入った、道はくねくねしていて運転
には向かないが、早く家に帰れる。ジョヴァンナは一計を思いついた。

店主は酔っていた、気分が悪いと言って車から降りてしばらく休んだ。ジョヴ
ァンナは危ないからと言ってジーノに運転させた。
この先あと500メートルも行けば崖が見える、二人は決心した。


翌朝、トラックと店主は無残にも崖の下に転がっていた。
警察は二人の事情調書をとり、周りの状況を見て、飲酒運転による事故死、
不慮の事故と結果をだした。二人には咎めなしだった。

二人の企ては成功した。
邪魔者はいなくなって店と家は彼ら二人の所有となった。
(出かけてから5日が過ぎていた。)

暑いわね、何か飲む?
(二人は店のカウンターでリキュールを飲んで喉を潤した)
戻れてうれしくないの?
   想像してたのと違ったよ。
これが現実よ、店を開ければお客も来るし、気持ちも楽になるわ。
   店を開けるのか?
もちろんよ。
何が言いたいの?
   何も。
私は幸せよ、信じられないわ。
あなたと二人になれて本当にうれしい。
これを夢みていたんでしょ?
   そうだな、夢みていたよ。
あくせく働いて泣いていたのよ。
毎日ひとりぽっちで泣いていた。
もう戻りたくない。
   戻らなくていい。
   全て済んだんだ。
あなたに愛されている?
そうじゃなくちゃ全てが無駄になる。
   ここから逃げなきゃ。ジョヴァンナ!
なぜ?
   ここにはあいつの影がある。
   焼き付いているんだ。
   カウンターの後ろに立っているんだ。
   ジョヴァンナ、店を売って別なところへ行こう。
なぜ大声で何をそんなに騒ぎ立てるの?
外に聞こえるわ。

女は現実的で、ちゃんと現実に順応している、男はまだ現実を受け入れられな
くて戸惑っている。
これが男と女の違いだ。

ジョヴァンナは店を切り盛りしながらよく働いた。ジーノは酒を飲みほとんど
ぶらぶらして過ごした。
彼女はしばらく店を繁盛させたいと思っていたが、彼は店を売り
二人で新天地を求めようと考えていた、そしてことあるごとに意見は対立した。


ジーノの昔の友達が訪ねてきた、彼は放浪の生活をしながら祭りの場所に行っ
て売買しながら生計を立てていた。彼は最近のジーノの事情を知って、ジーノ
は腰抜けだと言った。ジーノはジョヴァンナから離れられない、放浪はやめた
と言った。二人はもの別れになった。

ジョヴァンナとジーノの間に意見の対立から、よく口争いをするようになった。
まして店主に保険金がある知ってなおさらだった。

殺人現場を目撃したという運転手が警察に出頭した。警察は店主殺しの殺人で
はないかとジーノを疑うようになった。それで刑事が彼をそれとなく見張るよ
うになった。ジーノもそれに気がついた。

ジョヴァンナは妊娠した。ジーノの態度はそれで一変した。
二人は互いに歩み寄った。子どもが二人の間を和やかにして、
二人に生きる勇気を与えた。


信じられないわ、こんな時が来るなんて。 赤ちゃんがいるのよ。 体は醜くなるけど、でもいいわ、誇らしいわ。 これが人生なのね、ジーノ?   そうだ、人間らしさだ。 あの家から離れて 今頃警察が捜索しているでしょうね 捕まったら一緒にいられないわ   大丈夫だ   全てうまくいく   子供がいる俺たちに不幸は起きないさ   心配するな全部任せろ! (ここが二人の人生で最初で最後の幸福な時間だった、男女二人がお互いを信 じ合い、未来に希望をもって一歩踏み出したのだ、しかし・・・・・・・・)

遅いトラックを追い越そうとして運転を誤りジーノ達は土手下に落ちてしまっ
た。二人の乗っていた車は川に落ち沈んだ、ジーノはジョヴァンナを車から助
け出した。が、彼女は、

ジェームズ・ケインの原文にはその時の描写は次のように記述されている。

I was talking to her and crying, and kissing her.
Those kisses never reached her. She was dead.

監督:ルキノ・ヴィスコンティ
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ
マリオ・アリカータ
ジュゼッペ・デ・サンティス
ジャンニ・プッチーニ
原作:ジェームズ・M・ケイン
製作:カミッロ・パガーニ
出演者:マッシモ・ジロッティ
    クララ・カラマイ
音楽:ジュゼッペ・ロゼーティ
撮影:アルド・トンティ
   ドメニコ・スカーラ
編集:マリオ・セランドレイ
公開:イタリア: 1943年5月16日
   日本  : 1979年5月26日


これまで4度映画化されている。
1939年:ピェール・シュナール監督、
    フェルナン・グラベ、
    コリンヌ・リュシエール、
    ミッシェル・シモン
    「最後の曲がり角」と言うタイトルで映画化された。

1942年:ルキノ・ヴィスコンティ監督。
    出演はマッシモ・ジロッティとクララ・カラマイ。
    「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

1946年:テイ・ガーネット監督。
    ジョン・ガーフィールド、
    ラナ・ターナー主演。
    「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

1981年:ボブ・ラフェルソン監督。
    ジャック・ニコルソン、
    ジェシカ・ラング、
    マイケル・ラーナー
    「郵便配達は二度ベルを鳴らす」


読者としては読み落としたのだろうかと、何回か読み返しても郵便配達人はでてこない。
それは当然だ、この作品中に郵便配達は登場しない。この作品は13社から出版を断られ続け
て、14社目で採用が決まった際、出版社からタイトルはなんとつけるかと尋ね
られたケインは、「出版社からの返事の手紙を届ける郵便配達が2度ベルをなら
すので郵便配達だとわかる」ことを引き合いに出してこのタイトルに決めたと言
われる。私は、こんな俗気を脱してさっぱりとした、こだわりのない題名の付け方もあるのだと了解しました。




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