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世界を救うDVD映画「秋津温泉」(岡田茉莉子の世界) [映画]

<秋津温泉>
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孤立感を深める
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 死を決意した新子

岡田茉莉子は1933年の生まれだから、今からちょうど70年前の今日、天皇陛下の玉音放送はきける年齢だ。計算すれば12歳頃にあたる。

映画の中で演じている新子はもうちょっと年上だが(17歳)玉音放送をききながら「むずかしくてわからないわ」と言っている。100%わかった人はごく一握りだろう。しかし、戦争が終ったということは理解できたようだ。

この辺のことについて、後年の手記めいたもの(「女優岡田茉莉子」)を読むと、疎開先の新潟で空襲を体験されたそうだが、B29の機銃掃射の音に次の瞬間は自分も死ぬのだと思い死を覚悟されたようだ。また「私たちの世代は、あの忌まわしい戦争を背負わされ、生涯にわたって解き放たれることがないのだろう。」と語っている。
戦争は、たとえ生き残っても、癒やしがたい爪痕を残す。

終戦を知った後、どうしてあんなに泣いて涙が出るのだろうかと映画の中で川本周作(=長門裕之)が話していたが、実際どのような涙であったのか監督も明らかにしていない。
この情熱の持ち主が恋愛に正面から体当たりしていくのだから、その結果はプラスの方向に行ってもマイナスの方向に行ってもいかに波乱な展開があるのだろうと想像される。

周作は一目ぼれのように新子にひかれていく。しかし自分は喀血するほどの病気持ちだ。自分には望むべきでないと自身を制していた。が、新子の天真爛漫な生命の躍動のような女性にずるずると引き込まれていく。周作の心情も耐え難い葛藤がある。しかも新子の母親に避けられている。(肺病やみの男に娘をやろうとは思わない)

周作は暇さえあれば、たばこを吸う、酒を飲む、自分の体を考えればそんなことはできないはずだ。こんな自堕落な彼は意志が弱い証拠だ。
新子はこの青年を自分の力で直してみせると彼に入れ込んだ。こうして二人は互いに親密になっていく。

あるとき、二人が高原に遊んで、新子は周作の姿が見えなくなり真剣に「周作さん~、周作さん~」と呼んで探したことがあった。周作は寝転んで空を見ながら、新子の自分の名前が呼ばれるのを聴いて楽しんでいた。「俺は新子に愛されている、俺も新子を愛している!」と感じながら。

この時点では二人とも絵に描かれたような相思相愛の関係だった。周作の身体は次第に健康を取り戻し、心も前向きになり、生きることを謳歌したいと思うようになった。

彼は東京に出て作家の仕事を進めようとするが、それは容易に芽が出ない。そんなことで彼は人生にひがみをもつ性格がつのっていく。

そして別な女性と結婚、子を設ける。が、新子を忘れることができなく彼女のいる秋津温泉へ出向く。二人の結婚を反対していた新子の母親は既に他界していた。
新子が秋津荘の女将になっていた。ここで温泉旅館をやっていく決心をしたようだ。

彼が訪れると小娘のように喜び、彼を出迎え、帰っていくと魂が抜けたようになる。そんな繰り返しが何回か続いた。17歳の時彼と出会って、既に同じ17年間が過ぎた、しかし彼は新子のもとには落ち着かない。次第に新子はこんな人生を忌み嫌うようになっていった。

あるとき、周作が新子に会いに来て、泊まって帰るとき、新子は心中を持ちかける。彼は応じない、かつて周作が新子に心中を持ちかけた事があったが、周作はそんなことは一時の気の迷いだとさとすが、ならば私一人で死ぬと新子は思い詰める。まるで死に挑む(いどむ)かのようだ。

新子は死を覚悟した。
人間は自然の中に孤独に融け入らなければならないのか?
新子は愛人と別れ、人と別れ、自分自身からも離れ、自然の一部になろうと、
自然の懐に入って行った。

二人は路上でいったん別れたものの、異変に気が付いた周作は急いで駆け付けたが新子は手首を切って川に流されようとしていた。もっと積極的に新子に向かい合おうとすればよかったと後悔するが、もう遅い。なんとバカな男だと観ている方でやきもきする。新子の気持ちを理解できないのは男のクズだと思う。が、これが映画だ。

死を決意したときの新子の顔は美しすぎる。
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• 監督・脚本:吉田喜重
• 製作:白井昌夫
• 企画・衣裳:岡田茉莉子
• 撮影:成島東一郎
• 美術:浜田辰雄
• 編集:杉原よ志
• 音楽:林光
• 録音:吉田庄太郎
• 現像:東洋現像所
• 協力:津山市、奥津市

• 主な配役:
• 新子:岡田茉莉子
• 河本周作:長門裕之



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