シベリアの「爆走機関車」 [映画]
爆走機関車
ロシアには時々とてもすばらしい映画が出現する。
映画の最後に次の歌声が
美しいシベリア平原とともに心に響く。
-----*-----*-----*-----
私の愛しい人
私を連れて行って
遠い彼方へ
他人の振りをするから。
僕の愛しい人
遠くへ連れて行ってあげるよ
でも遠い彼方で
他人など必要ない
私の愛しい人
私を連れて行って
遠い彼方へ
あなたの妻になるから
遠い彼方へ
あなたの妻になるから
-----*-----*-----*-----
私がロシアと言えば、
小学校時代に音楽の時間に歌った「トロイカ」とか、
中学校時代に歌った「ボルガの舟歌」などから
感性的には「しっとりしたいい感じ」で通ってきた。
また、「地球は青かった」で知られるガガーリン少佐も
科学の進んだすごい国だと印象が残った。
でも、社会科で大戦中の日ソ不可侵条約破棄とか北方領土問題が出てくると、ロシアに対する見方が少し変わってくる。
でも「罪と罰」、「悪霊」などに接すると人間の本質に迫ろうとする試みにすごいなあと思う。
また最近読み始めた「チェルノブイリの祈り」で、放射能の悲惨さを知った。まだ読み始めたばかりですが。
きょうは、映画「爆走機関車」の感想を書きたい。
一言で言えば、極寒の僻地シベリアにおける人間の愛の強さを歌い上げたものだと解釈した。
第2次大戦中1000万人以上のソ連人がナチスドイツの捕虜となった。戦後帰還した者の多くはシベリアの僻地(へきち)に強制労働に追いやられたり、或いは収容所送りとなった。ドイツの手先となった反逆者がいると思われたからだ。
映画は1945年シベリアのクライ駅に主演のイグナトが到着する所から始まる。彼は大戦中功労賞を受けた軍人上がりの機関車修理長として、ここに派遣された。
機関車はシベリアを開拓する心強い機械であった。機関車も見るからに頼もしく見える。
機関車にニワトリを飼うほどのおおらかさもある。朝食には卵をスコップに置いて石炭の釜の中へ入れて目玉焼きを作って食べる。
ある日、イグナトは線路を夜通し歩き朝方、古い機関車を発見する。鉄橋が川の流水のため壊され、そのため動けなくなってしまったようだ。
その機関車の中に人間が一人住んでいた。それは若い女性で、父親(ハネケ)はドイツ人技師。夫(グスタフ)もドイツ人の機関車整備技師、このシベリアで開拓に手を貸していた。しかし、軍部から彼らがドイツスパイと疑われ殺されてしまう。それで女性だけが命からがら逃げてこの森の中で機関車に住み、銃を持って生活していたのだ。
イグナトは初めその女性と敵対関係にあったが、森の中に2人しかいないことから次第に仲良くなっていった。そして2人で鉄橋を修理して、また機関車も修理して、村へ帰って来たのである。
この2人の努力は並大抵のものではない。イグナトが機関車に対して並々ならぬ情熱を持っていたからだ。しかし村に帰ってきても2人は歓迎されなかった。
この村では連れがドイツ人であることから憎まれた。
ある日、線路にヒグマが入って機関車にひかれて死んだ。そのヒグマを村に持ち帰り、村中でその肉を食べた。村中の人達には大変なごちそうであった。こんな時は、誰も彼も愉快に時を過ごせた。
この村を仕切っている軍人、フィッシュマンがいた。
村人全員を集めこう言った。
「おまえ等は国に養ってもらっているくせに機関車を壊しドイツ人をかくまった。反逆者め!同士スターリンはおまえ等を哀れみ守ってくれた。ドイツ人を一掃せよ!」
ある日、フィッシュマンはドイツ人の子供を助けようとした女性をピストルで撃って殺してしまう。村人達はそれを見て怒り心頭、フィッシュマンにみんな背を向ける。
フィッシュマンが家に帰るため機関車に乗るが、運転手も彼には背を向け、自分で運転しろと言って機関車から降りてしまう。
仕方なく彼は自分で機関車を運転する。
そこに出てきたのが我らのイグナト、彼はフィッシュマンに戦いを挑み機関車の競争をする。
「おまえの機関車は50kも出まい!」とフィッシュマンにけなされるが、イグナトは頑張る。これが映画の題名の「爆走機関車」である。
手に汗握る機関車どうしの戦いになるが、結果的にイグナトの勝利、フィッシュマンの機関車は壊れる。
最後にシベリアの美しい自然と歌声が流れ、
イグナト、その妻エルザ、ドイツ人の孤児パーシャの3人家族でこれから過ごしていくというところで幕が下りる。
シベリアの厳しい自然の中で「ボルガの舟歌」のような人々のたくましさと力強さを感じる、また3人家族の幸せも見えてくる。
スタッフ
監督:アレクセイ・ウチーチェリ
脚本:アレクサンドル・ゴノロフスキー
撮影:ユーリー・クリメンコ
音楽:デビッド・ホームズ
キャスト
ウラジミール・マシコフ
アンジョルカ・ストレチェル
バチェスラフ・クリコノフ
ユリア・ペレシルド
セルゲイ・ガルマッシュ
原題:Kray
製作年:2010年
製作国:ロシア
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ロシアには時々とてもすばらしい映画が出現する。
映画の最後に次の歌声が
美しいシベリア平原とともに心に響く。
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私の愛しい人
私を連れて行って
遠い彼方へ
他人の振りをするから。
僕の愛しい人
遠くへ連れて行ってあげるよ
でも遠い彼方で
他人など必要ない
私の愛しい人
私を連れて行って
遠い彼方へ
あなたの妻になるから
遠い彼方へ
あなたの妻になるから
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私がロシアと言えば、
小学校時代に音楽の時間に歌った「トロイカ」とか、
中学校時代に歌った「ボルガの舟歌」などから
感性的には「しっとりしたいい感じ」で通ってきた。
また、「地球は青かった」で知られるガガーリン少佐も
科学の進んだすごい国だと印象が残った。
でも、社会科で大戦中の日ソ不可侵条約破棄とか北方領土問題が出てくると、ロシアに対する見方が少し変わってくる。
でも「罪と罰」、「悪霊」などに接すると人間の本質に迫ろうとする試みにすごいなあと思う。
また最近読み始めた「チェルノブイリの祈り」で、放射能の悲惨さを知った。まだ読み始めたばかりですが。
きょうは、映画「爆走機関車」の感想を書きたい。
一言で言えば、極寒の僻地シベリアにおける人間の愛の強さを歌い上げたものだと解釈した。
第2次大戦中1000万人以上のソ連人がナチスドイツの捕虜となった。戦後帰還した者の多くはシベリアの僻地(へきち)に強制労働に追いやられたり、或いは収容所送りとなった。ドイツの手先となった反逆者がいると思われたからだ。
映画は1945年シベリアのクライ駅に主演のイグナトが到着する所から始まる。彼は大戦中功労賞を受けた軍人上がりの機関車修理長として、ここに派遣された。
機関車はシベリアを開拓する心強い機械であった。機関車も見るからに頼もしく見える。
機関車にニワトリを飼うほどのおおらかさもある。朝食には卵をスコップに置いて石炭の釜の中へ入れて目玉焼きを作って食べる。
ある日、イグナトは線路を夜通し歩き朝方、古い機関車を発見する。鉄橋が川の流水のため壊され、そのため動けなくなってしまったようだ。
その機関車の中に人間が一人住んでいた。それは若い女性で、父親(ハネケ)はドイツ人技師。夫(グスタフ)もドイツ人の機関車整備技師、このシベリアで開拓に手を貸していた。しかし、軍部から彼らがドイツスパイと疑われ殺されてしまう。それで女性だけが命からがら逃げてこの森の中で機関車に住み、銃を持って生活していたのだ。
イグナトは初めその女性と敵対関係にあったが、森の中に2人しかいないことから次第に仲良くなっていった。そして2人で鉄橋を修理して、また機関車も修理して、村へ帰って来たのである。
この2人の努力は並大抵のものではない。イグナトが機関車に対して並々ならぬ情熱を持っていたからだ。しかし村に帰ってきても2人は歓迎されなかった。
この村では連れがドイツ人であることから憎まれた。
ある日、線路にヒグマが入って機関車にひかれて死んだ。そのヒグマを村に持ち帰り、村中でその肉を食べた。村中の人達には大変なごちそうであった。こんな時は、誰も彼も愉快に時を過ごせた。
この村を仕切っている軍人、フィッシュマンがいた。
村人全員を集めこう言った。
「おまえ等は国に養ってもらっているくせに機関車を壊しドイツ人をかくまった。反逆者め!同士スターリンはおまえ等を哀れみ守ってくれた。ドイツ人を一掃せよ!」
ある日、フィッシュマンはドイツ人の子供を助けようとした女性をピストルで撃って殺してしまう。村人達はそれを見て怒り心頭、フィッシュマンにみんな背を向ける。
フィッシュマンが家に帰るため機関車に乗るが、運転手も彼には背を向け、自分で運転しろと言って機関車から降りてしまう。
仕方なく彼は自分で機関車を運転する。
そこに出てきたのが我らのイグナト、彼はフィッシュマンに戦いを挑み機関車の競争をする。
「おまえの機関車は50kも出まい!」とフィッシュマンにけなされるが、イグナトは頑張る。これが映画の題名の「爆走機関車」である。
手に汗握る機関車どうしの戦いになるが、結果的にイグナトの勝利、フィッシュマンの機関車は壊れる。
最後にシベリアの美しい自然と歌声が流れ、
イグナト、その妻エルザ、ドイツ人の孤児パーシャの3人家族でこれから過ごしていくというところで幕が下りる。
シベリアの厳しい自然の中で「ボルガの舟歌」のような人々のたくましさと力強さを感じる、また3人家族の幸せも見えてくる。
スタッフ
監督:アレクセイ・ウチーチェリ
脚本:アレクサンドル・ゴノロフスキー
撮影:ユーリー・クリメンコ
音楽:デビッド・ホームズ
キャスト
ウラジミール・マシコフ
アンジョルカ・ストレチェル
バチェスラフ・クリコノフ
ユリア・ペレシルド
セルゲイ・ガルマッシュ
原題:Kray
製作年:2010年
製作国:ロシア
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2015-10-29 23:56
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